野球論

最強打線のラストピース、2番と5番

こんにちは、タッツ(@tatsuvish222)です。

先日こんなツイートをして、ありがたいことにそこそこの反響をいただきました。

鈴木大地や糸原、そして西川龍馬や中村晃は「最強打線を作るためのラストピース」だと思っていますRT

その中でもゴリゴリのプルヒッターの大地と出塁率寄りの糸原は2番タイプでなんでもコンタクトする龍馬は5番が適任、中村晃は器用なので打順によってスタイルを変えていると分析してます— タッツ (@tatsuvish222) 2019年6月2日

今回はこの「最強打線を作るためのラストピース」について解説していきます。

”ラストピース”の定義

すべての野球選手にとっての最高の打撃は本塁打であり、野球ファンにとっても本塁打こそが華なのは間違いありません。
しかし、狙って簡単に本塁打を打てるほど野球の世界は甘くありません。

そんな中にあって先のツイートの中で名前を出した選手たちは、”本塁打こそあまりないもののその他の打撃であれば何でもできる”のが特徴です。
鈴木大地選手(ロッテ)糸原健斗選手(阪神)、西川龍馬選手(広島)、中村晃選手(ソフトバンク)…こういった選手たちの「確率の高い安定した打撃」が最強打線には欠かせません。

※このツイートをした後にフォロワーさんから近藤健介選手(日本ハム)の名前が出てきましたが、これはツイートしたときに完全に筆者に抜け落ちていた情報でした。近藤選手ももちろんここに該当する選手です。

配置する打順

ではこういった選手たちは何番を打たせると一番効果が生まれるでしょうか(ツイートに答えが書いてありますが見なかったことにしてください)。

まずは”何でもできる”器用な打者の打順として2番が浮かびます。
アマチュアでは”バント、小技専”のような打者が入ることが多い打順ですが、もともと昔の2番打者はそれでいて2割8分以上は打てていました。
2番は1番の次に多く打席が回ってきますから、安パイ打者ではなく確率の高い打者を配置するポジションと言えるでしょう。

そしてもう1つ、打順の中でベストな配置があると考えています。
それが5番です。

日本の現代野球では4番にチーム最強打者、3番にチームで最もバランスのとれた打者を配置する傾向が窺えます。
3,4番とチームのNo.1とNo.2が配置されているので、この2人の打者は高い出塁率を持つことになります(というかそうでないと打線は機能しないはずです)。

2番に”何でもできる”打者を入れていれば前の3人のうちの誰かが常に塁上を賑わせている可能性は高く、得点圏にいるランナーを確率高く返していける打者を5番に配置することがベストであると考えます。

最も象徴的だったのは昨年の日本シリーズのソフトバンク打線ではないでしょうか。
3番にバランスのとれた好打者のグラシアル選手、4番に最強打者の柳田悠岐選手の後に5番中村晃選手がいることで広島バッテリーは息つく暇がなかったように見えました。
第5戦の4回裏には広島のエース大瀬良大地投手が無死1塁から3番グラシアル選手に安打を浴び、4番柳田選手を警戒して歩かせ満塁となったあと、5番中村選手に2点タイムリーを打たれるという場面もありました。

一昔前はこうした打者を6番に配置し5番に長打力の高い選手が起用されることが多かったですが、3,4番の次が穴の大きい打者であるとそこで相手にひと息つく間を与えてしまいます。しかしここに確率の高い打者を配置することでそうした間を与えず、さらに後ろの6番に長打力のある選手がいれば一気に大量得点が望めます。

2番と5番の違い~2番向きの選手~

タイプとしては”何でもできる”と評される打者の中でも、2番が適任な選手と5番が適任な選手が存在します。

まず2番の場合は1番打者の前が(基本的に)チーム最も弱い9番打者であること、後ろには強力な3,4番が控えていることを考えると出塁能力の高さが求められます。
中村選手はレギュラーに定着した2013年以降で IsoD(出塁率ー打率 )が.080を超えなかったのは2014年のみで(それでも2014年も打率.308、出塁率.375を記録)、糸原選手は入団以来3年連続でIsoDが.100を超えています。

また1番打者には俊足の選手を起用するチームが大半であることから、ストレートを強く引っ張れる選手も2番向きです。
鈴木選手はここに該当し、今季のストレートの打率は.302、全49安打のうち30本が右方向と打ってランナーを進めるには最高クラスの打者と言えます。

2番と5番の違い~5番向きの選手~

では5番が適任な選手はどんなタイプでしょうか。

5番の場合は先に記しましたが、前の2~4番の出塁率が高いためにその走者を確率高く返すことが求められます。
西川選手は今季のIsoDは.026と極めて低い数字ですが5月から起用された5番では打率.319、得点圏打率.385を記録しており、その役割を全うしています。
また全49安打を左方向12本、中方向18本、右方向19本と広角に打ち分けている器用さも5番向きです。球種別で見てもカットボール以外の変化球に対しすべて打率3割以上を記録していて、どの球種でも対応できる一方ストレートの打率は.250とやや寂しい数字となっています。

2番打者には出塁能力とストレートを右方向に強い打球を引っ張ることが求められるため、西川選手はこの要素を満たしません。
一方鈴木選手は49安打のうち30本が右方向で得点圏打率も.279とそこまで高くありません。球種別に見てもカーブ、チェンジアップ、カットボール、シンカーと4つの変化球の打率が3割未満とやや器用さに欠け、5番として起用するには物足りない数字となっています。
また糸原選手はIsoDが.100超えの強みを活かす意味で2番が適任でしょう(今期の得点圏打率は.260)。
中村選手は2015年までは得点圏打率が3割を超えていて、2016年はリーグトップの出塁率.416を記録するなどスタイルが変わる選手です。

※今期の数字は6月3日現在、出典はデータで楽しむプロ野球

5番打者に出塁率はいらない

ここまで”何でもできる”選手の重要性について触れてきましたが、5番打者の場合は出塁率の高さ(=IsoDの高さ)は仇となってしまいます。

理由は、6番以降の打者は「下位打線」という扱いになり、基本的に実力の落ちる打者が並ぶことがほとんどであるからです。つまり走者が溜まった状態で5番打者に回ってきた場合、ここで得点できなければ後ろに繋いでも得点できない可能性が高まってしまうのです。

筆者の記事『現代野球における打順の組み方を考える』の中で、6番打者の役割として「長打力でとどめを刺す」ことを挙げています。この「とどめ」は、前の打者で得点が取れていなければ成立しません。

攻撃のイメージとしては5番打者の嫌らしさで得点を取り、6番打者の長打力でとどめを刺すことになります。6番打者は長打力を売りにしている場合が多く、1点を取るためのコンタクトヒッティングを得意としている打者はごく少数です。

このことから、5番打者には「打って繋ぐ」能力が求められます。たとえセイバーメトリクスの数字が伸びなくとも、得点圏打率を残すことが何より重要な打順です。

まとめ

まとめると以下のようになります。

2番には出塁率やストレートの打率など少々細かいデータに拘り、それらを満たす打者を起用
5番にはあらゆる球種を広角に打ち分けられ、得点圏打率の高いコンタクトヒッターを起用
数字は年によって変動するので、シーズン毎に打順適性を見定める

ここまで名前を出してきませんでしたが、青木宣親選手(ヤクルト)や近藤健介選手(日本ハム)など完璧に近い数字が出る選手がいる場合には、他の打者のタイプに合わせて打順を決定していけばいいでしょう。

フライボール革命が日本でも本格流行の兆しを見せる今季のプロ野球。
本塁打が華だからこそ、今回のような”何でもできる”選手が最後に打線の質を決めてきます。

アマチュアにもこうした目立たないけど好打者である選手はたくさんいますので、野球を見る時の着眼点の1つにしてみてください。